出版企画・出版原稿の持ち込み方法と基礎知識

これから商業出版で本を出したいとお考えなら、出版社に企画や原稿を持ち込むという方法があります。ただし、出版社への企画・原稿の持ち込みは、事前の準備なしでは失敗する可能性が高いです。

そこで、本記事では出版企画・出版原稿の持ち込み方法について詳しく解説します。出版社へ企画・原稿を持ち込む上で知っておきたい基礎知識をまとめているため、参考にしてください。

企画や原稿の持ち込みとは?

出版社に出版を目的にした企画や原稿を提案・提出することを持ち込みといいます。

一昔前は、言葉の通り「原稿を持参し手渡し」していました。現在は原稿執筆そのものがデジタル化されたこともあり、メールや郵送での提出が主流になっています。2020年以後に出版業界も大きく変わり、非対面でのやり取りが中心です。

書籍を出版する方法は大きく分けると商業出版と自費出版の2種類です。自費出版とは自身で費用を捻出して本を出版する方法を指します。一方、商業出版とは出版社が費用を負担した上で書籍を出版する方法です。

出版社は社内で企画を考えて書籍を出版するだけではなく、持ち込みや紹介などにより外部から持ち込まれた企画をもとにして出版をするケースもあります。中には、出版社のサイト上で原稿を募集している場合もあり、外部から持ち込まれた企画・原稿がベストセラーにつながった事例も少なくありません。

ただし、企画を持ち込んだとしても採用は稀です。十分な準備を行い、商業出版して利益を得られる見込みがあると納得させられる形で提案しなければいけません。

持ち込み先の選び方

出版企画の持ち込み先を選ぶ際には、できるだけ採用されやすい出版社を探すことが重要になります。広く募集をしているケースを除けば、突然出版社に企画を持ち込んでも採用される可能性はほぼないでしょう。原則は誰かに紹介してもらうことです。

出版社の編集部に知人がいる場合は、企画の持ち込みをしやすいでしょう。知人がいない場合には、過去に出版歴のある方から出版社を紹介してもらうという方法があります。

もし、誰にも紹介を頼めない場合には、自力で出版社に企画を持ち込まなければいけません。その場合は、できるだけ幅広く企画持ち込みに対応している出版社を探しましょう。過去に企画持ち込みから商業出版をした実績が豊富にある出版社であれば、企画の持ち込みに応じてくれる可能性があります。

出版社が企画の持ち込みに対応しているかどうかはウェブサイトをチェックしましょう。応募要項や応募フォームが用意されている場合は、積極的に企画を募集していると判断できます。

注意点として、これから持ち込みたい企画と同ジャンルを扱っている出版社を選びましょう。出版社にはそれぞれ得意とするジャンルや力を入れているジャンルがあるからです。たとえば、小説をメインにしている出版社からノンフィクションの作品をメインにしている出版社まであります。ジャンルが異なる場合、検討すらされないことが現実です。

持ち込み時に必要な企画書の書き方

出版企画を持ち込む際には企画書を提出しなければいけません。企画書とは、出版企画の詳細について説明したものです。企画書の内容は、企画が採用されるかどうかに大きな影響を与えます。企画内容に出版をするだけの魅力があることを納得してもらう必要があるため、時間をかけて内容を考えましょう。

企画書の書き方については、持ち込み先がフォーマットを指定しているかどうかが重要です。フォーマットがあらかじめ用意されている場合は、フォーマットで指定された内容や書き方に従って作成します。フォーマットが用意されていない場合は、一般的な企画書の形式を参考にして書きましょう。

出版企画の企画書には、以下のような項目が含まれるのが一般的です。

  • 企画タイトル
  • 仮の書名
  • 作品の概要やあらすじ
  • 目次案
  • 想定する読者層、その数
  • 類書で売れている作品名、類書と差別化を図れる点
  • 著者のプロフィール
  • SNS等で宣伝力が示せる場合にはその数や程度

単に作品の内容やタイトルを記すだけではなく、企画の趣旨や想定する読者層、販促など実際に本を販売する上で重要なポイントも記載しておきます。特に類書との差別化を図れるポイントは重要であり、強みをしっかりとアピールして、提案する企画が売れる見込みのあるものであると納得させられなければいけません。
特異である点を強調される企画が多いですが、客観的であるかを提出前に再度確認しましょう。おお

希望する定価や印税、造本仕様、宣伝方法などを丁寧に記載されるケースを見かけます。
既に実績がある小説家や著述家の方であれば、おおよその希望として伝えることは分からなくもないですが、検討する編集者受けは悪い場合が多いため注意が必要です。
(令和の出版不況下、出版前から宣伝方法を確定させているタイトルは非常に稀です。初動や増刷タイミングなどを見ながら宣伝方法を柔軟に組み合わせることが多いのが実態ではないでしょうか。)

持ち込む原稿のフォーマット

多くの出版社では、出版企画の持ち込みで提出する原稿について特にフォーマットを定めていません。たとえば、原稿をWordファイルのデフォルト書式で作成しても問題ないです。デフォルト書式の場合は、フォント10.5で36行の設定になっています。

持ち込む原稿のファイル形式については、特別なソフトや特殊な環境を整えなくても閲覧できるものが望ましいです。悩むくらいであれば、.docx(Word)や.pdf(PDF)で作成し提出しましょう。

縦書き、横書きについても大半の出版社は指定がありません。ご都合の良い形式で準備します。

ファイルにパスワードをかけて提出することは避けます。写真が多くファイルサイズが大きくなる場合には、一部分のみを提出し、全文は指示を仰ぐと良いでしょう。
企画書や原稿の送付方法、持参方法

企画書や原稿の送付方法は、それぞれの出版社によって異なっています。サイト上で企画を募集している場合は応募フォームが用意されているため、画面の指示に従ってファイルを送りましょう。

メールで企画書を送る場合は、原稿をメールに添付して送ります。紙に印刷して郵送する方法もあります。

原稿の中に画像が含まれる場合は、ファイルサイズが大きくなるケースに注意しましょう。ファイルサイズが大きいとメールに添付して送るのが難しい場合があります。ファイルサイズが大きい場合は、画像をオンラインストレージやファイル転送サービスなどによって送ることが可能です。

紙の原稿や写真を送る場合は、コピーを送るようにしましょう。
出版社の多くは応募原稿の返送をしませんから、必ず原本は手元で保存しておきましょう。原本を出版社に渡してしまうのはトラブルの原因になります。

注意点として、出版社に直接原稿を持参するのはおすすめしません。事前にアポを取らなければ、大半は原稿を受け取ってもらえないからです。また、事前に連絡した場合は、メールや郵送などで原稿を送付することを求められることが多いでしょう。トラブルの原因にもなるため、原稿の持参を一切受け付けていない出版社が大半です。

企画等を持ち込んだ後の流れ

出版社に企画を持ち込んだ後の流れは以下の通りです。

  1. 著者との打ち合わせ
  2. 出版社内の企画会議
  3. 契約詳細の相談
  4. 契約
  5. 制作
  6. 印刷製本・販売

提案した企画の内容に興味を持たれたならば、実際に担当者と打ち合わせをすることになります。打ち合わせについての連絡はメールや電話で行われるのが一般的です。

打ち合わせの段階ではまだ出版できるかどうかは未確定です。打ち合わせでは出版社の編集者と企画内容について詳細な話し合いをします。企画について細かな点を質問されるため、明確に回答することが重要です。

打ち合わせをした上で編集者が問題ないと判断すれば、出版社内の企画会議で検討します。実際には編集部で行われる企画会議に加えて、一部の会社では営業部との営業会議にも通らなければいけません。多くの企画は会議の段階でストップがかかります。魅力的な企画であると編集部や営業部が判断すれば、企画にGoが出されます。

企画が会議を通過した後は、契約についての詳細を相談します。印税や出版物の権利など詳細な部分を確認します。契約内容について著者と出版社の双方が合意したならば、契約を締結します。(契約書を取り交わさない出版社がまだまだあるようです。言った言わないを避けるためにも契約書を結ぶ出版社と進めるようにしましょう。)

契約をした後は実際に制作に取りかかりましょう。契約を締結した後で制作に取りかかっても問題ありません。(契約の前段階である程度原稿を書いてほしいと言われるケースもあれば、契約締結後に執筆着手で問題ないケースもあります。)

著作が完成した後は、編集や校正などを行い、印刷をして、販売するという流れです。

持ち込む際の注意点

出版社に企画を持ち込む際には以下の行為をすると印象が悪いため避けましょう。

  • 持ち込みを受け付けていない出版社に持ち込む
  • 企画書の中身がない
  • 出版社の都合を無視した方法で持ち込みをする
  • アポ無しの訪問をする

持ち込みを受け付けていない出版社に企画を持ち込むべきではありません。企画の持ち込みを受け付けているかどうかわからない場合は事前に確認しておきましょう。

企画を持ち込む場合は、企画書の内容をしっかりと練り上げておくことが大切です。支離滅裂な企画やふんわりとした抽象的で的を得ない企画書を提出するのは迷惑になります。

出版社の都合を無視した方法で持ち込みをするのは心象が悪いです。たとえば、事前のアポ無しで訪問を行い、企画書と原稿を提出するのはマナー違反となります。

トラブルを避ける目的で、上記のようなケースは検討すらせず、不採用とする場合が多いでしょう。社会人としての最低限のマナーを守って、出版社に企画の持ち込みをしましょう。

また、以下の行為をするのも、心象が悪くなる可能性があるため注意が必要です。

  • ライターに代筆させることを前提とした企画を持ち込む
  • 宣伝方法や営業方法について企画段階で細かく指示を出す

代筆することを前提とした企画を提案する場合は熱意を疑われる可能性があります。(その方のお名前で売上の見立てがつくようなケースは例外です。)文章を書くのが苦手なため、執筆はゴーストライターをつけて欲しいと要望付きで企画を出される方も稀にいます。編集者としては執筆が苦手でなぜ出版を?と感じているのではないでしょうか。

また、宣伝方法や営業方法は出版社が主導的に決める部分であり、持ち込み段階で細かな指示を出すのはおすすめしません。
指示にそえることが前提だと判断するため、企画に求めるハードルは極端に高くなります。持ち込みの段階であまり細かな指示や指定を出すのは避けた方が良いでしょう。