本を出したいと考えている方は多くいますが、具体的な方法はあまり知られていません。出版方法にはいくつかの種類があり、本の形態には多くの種類があります。
本記事では本を出版したい方のために出版方法や本の形態、本を出すための具体的なアクションなど基本的な知識を解説します。
目次
出版方法は3種類ある
出版方法には大きく分けて以下の3つの方法があります。
- 商業出版
- 自費出版
- 私家版(自己出版)
それぞれの出版方法の特徴を簡単に解説します。
商業出版
商業出版とは出版社が制作費用のすべてを負担して出版することです。宣伝から流通まですべて出版社が担当します。持ち込み企画から商業出版が行われる場合でも、あくまでも出版社が最終決定権を持ち、企画から宣伝、流通まで行われるのが特徴です。商業出版は売れることが重要であり、原稿内容やタイトルなどは売れることを優先して決定されます。印税で収入を得ることが目的の場合には、この方法を選択します。
自費出版
自費出版とは著者が自身で費用を支払って出版することです。作品を執筆して、出版社に依頼をしてデザインや印刷製本してもらい販売します。出版社の多くは流通ルートを持っているため、他の書籍と同様に書店に書籍を並べ、販売することが可能です。
売れなかった場合の赤字リスクを著者自身が負うため、内容やタイトル等の決定権が著者にあります。(権利侵害が疑われる場合や書店等が店頭に並べづらいタイトルの場合には、タイトルの変更を勧められる場合があります。)
名刺代わりとなる著者が欲しい場合や、ご自身の作品を発表の場として書籍にしたい場合などに最適です。個人でなく、企業が宣伝やブランディングを目的に出版することを企業出版と言い、これは自費出版の一種です。
私家版(自己出版)
私家版(しかばん)とは、身近な人のために本を出版するもので、流通を行わないのが特徴です。流通を目的としていないためISBNはなく、著者自身で印刷所やコピー機を用いて作成します。自己出版と呼ばれ、出版社の中には私家版に対応する会社も存在します。
歌集・句集などをサークルメンバーで作成する場合をイメージすると分かりやすいでしょう。
本の形態は3種類ある
本の形態は大きく分けて以下の3種類が存在します。
- 上製本、並製本
- プリント・オン・デマンド
- 電子書籍
それぞれの本の形態について特徴を簡単に説明します。
上製本、並製本
上製本や並製本は紙で印刷され、耐久性のあるしっかりとした本を指します。
上製本はいわゆるハードカバーのことです。厚い表紙を採用しており、長期保存に適していて、高級感のある仕上がりになります。その分、原価も高く、書籍の定価も高くなりやすいです。
並製本はソフトカバーのことで、比較的柔らかい紙を表紙に採用しているのが特徴です。綴じ方の違いによって平綴じや中綴じ、無線綴じなどがあります。書店で見かける書籍の7割程度はこの並製本です。
プリント・オン・デマンド
プリント・オン・デマンドとは書籍の注文を受けてから印刷・製本を行う形態を指します。プリント・オン・デマンドは並製本が大半です。ソフトカバーがつかない表紙紙がむき出しのタイプが中心です。
プリント・オン・デマンドはオンライン上で注文を受け付けて、印刷・製本し発送します。昨今は印刷技術の性能向上により、通常の並製本と大差なくなりました。
一番の差分は、注文を受けて印刷するため、書店に並べる選択肢がないことと、絶版という概念がないことです。
電子書籍
電子書籍とは書籍の内容を電子データ化して、さまざまなデバイスで閲覧できる書籍のことです。一般的にiPhoneやAndroid端末(スマートフォン)で読まれます。
電子書籍はオンライン上で販売されており、購入した後は書籍のデータをダウンロードして、手元にあるデバイスで閲覧します。
電子書籍は印刷をする必要がなくコストを抑えられる点がメリットです。そのため、紙の書籍よりも低い価格で販売されています。印刷や流通の手間がかからないため、個人で本を出版したい場合に電子書籍が選ばれるケースは増えています。
商業出版で本を出すには
商業出版で本を出す場合、いくつかルートがあります。具体的には以下の方法です。
- 声がかかる状態を目指す
- 大賞などへ応募する
- 出版社へ持ち込む
- 出版エージェントを利用し企画を磨く
商業出版を実現するための方法を詳しく解説します。
声がかかる状態を目指す
知名度を上げることで出版社の方から商業出版の声がかかるケースがあります。インターネット上で自身の作品を発表する、SNSでフォロワーを増やすといった方法が効果的です。
知名度を上げる際には、あらかじめ業界や領域を絞ることをおすすめします。特定のジャンルに特化している方が、商業出版したときに売れ行きを見込めて、出版社の方から声をかけやすくなるからです。
出版社内で企画を立てた際に、その領域で出版経験のある識者や、WEBメディアで執筆されいる方から選定することもあります。
大賞などへ応募する
小説やエッセイ、漫画などで商業出版したい場合は、自身の作品を大賞などへ応募する方法があります。入賞することで商業出版が確約されているケースが多いです。ただし、大賞などへの応募は競争率が高い点も事実です。
出版社へ持ち込む
商業出版するための企画を出版社へ持ち込むという方法があります。編集者の知人がいれば相談してみると良いでしょう。
繋がりがない場合には、出版社の中で企画募集をしている会社を探しましょう。
(一例として、このようなページを設けている出版社があります。)
編集者がチェックをして、会議を通して、売れる見込みがあると判断されれば商業出版できます。
出版エージェントを利用し企画を磨く
出版エージェントと契約を行い、出版企画を磨いて、出版社に売り込みをかけるという方法があります。出版エージェントが代理人として出版社に企画を持ち込む場合もあります。
企画作りからサポートがあり、出版社との交渉に対応する場合もあります。数十万~数百万の費用がかかるようで、良し悪しは著者の目的により変わってきそうです。
商業出版は売れるか否か
商業出版は出版社がビジネスとして利益を追求して行うものであり、売れるか否かが重要です。商業出版における売上の考え方について以下で詳しく解説します。
大きな売上が期待できる
商業出版では大きな売上を期待できるかどうかが重要になります。一般的に大きな売上といえば10万部以上を狙えるかどうかです。当然難易度が高く、全てが上手くいくものではないですが、市場規模(読者数)として狙いテーマか否かは見られています。
売上の規模は限定的だが手堅く売れる
対象とニーズが明確であり、ある程度は手堅く売れる場合は、商業出版としての見込みがあるといえます。ニッチな分野であっても、確実に数千部~1万部程度の売上を期待できるのであれば、企画が通る可能性は高いです。
自費出版で本を出すには
自費出版で本を出す選択肢として、完全にすべてご自身で行う方法と出版社のサポートを受ける方法の2種類があります。
執筆から編集、デザイン、印刷、販売まですべてご自身で行う場合は、ISBNやJANコードの取得が鬼門です。すべてご自身で行う場合、手間がかかり、コストは抑えられます。
出版社のサポートを受ける場合は、校生から印刷、製本、流通まで代行してくれるのが特徴です。多くの場合、原稿の執筆とゲラの確認作業を著者が行い、その他の作業は任せられます。書店で書籍を販売したい場合には、ほぼ全ての方が出版社のサポートを受けています。
私家版で本を出すには
私家版を出すには原稿を用意して、印刷を行います。印刷は自力で行う方法と、印刷会社に依頼する方法があります。出版社の中には私家版の出版をサポートする会社もあり、出版社に依頼すると私家版を出すための多くの作業を代行してもらえます。
一般的には、Word等のワープロソフトでA5用紙で設定し、原稿を仕上げます。この際に綴じ代を意識して作成することが重要です。
印刷はご自宅のプリンターを用いることもありますが、必要な材料を準備する大変さもあるため、少ない部数であれば冊子印刷会社を利用しましょう。
商業出版で本を出す場合の流れ
商業出版で本を出すまでの流れを以下にまとめました。
- 企画の持ち込み
- 打ち合わせ
- 企画会議
- 契約の相談
- 契約
- 制作
- 印刷・販売
1.まずは企画書を作成して出版社に持ち込みをします。出版社へ持ち込む方法には、応募フォームや郵送、出版社への持参などがあります。各社Webサイト等で応募方法を指定しています。必ず指定方法に従いましょう。(指定方法外は通常審査すらしません。)
2.企画を持ち込み、編集者が興味を持った場合には、打ち合わせをします。企画についての説明を求めれますから、質問等へ対応できると良いでしょう。
3.打ち合わせ後、編集者が進めたいと考えた場合、企画会議で売れる見込みがあるかどうか話し合いが行われます。企画が通ったならば、編集者から連絡があるため、契約に関する相談を行います。
4.契約内容は権利の話、印税などのお金の話が中心です。
5.契約内容について合意を得られれば契約を締結します。口約束で進むケースがありますが、後日の言った言わないの原因になりますから、書面にすることを推奨します。
6.制作に取りかかります。企画のみで原稿執筆の前の場合には執筆開始のタイミングです。
執筆後、校正やデザインなどを行います。
7.データが完成すると、発売スケジュールをたて、印刷製本をし、販売するという流れです。
持ち込んだ企画が企画会議に通るかどうかが重要であり、しっかりと準備することが求められます。
出版社へ企画や原稿を持ち込む方法とその準備
出版社に対して企画や原稿を持ち込む方法、各方法の詳細をここではまとめます。
- 応募フォーム
- メール添付
- 印刷し郵送
応募フォーム
出版社が出版企画を募集している場合はWebサイト上に応募フォームが設置されているケースが多いです。応募する際にはフォーマットを指定していることが多いため、あらかじめ確認しましょう。
lメール添付
応募フォームではなく、メールアドレスが記載されている場合、メールに企画書や原稿を添付して送付します。メールで応募する場合も、応募時に必要事項を送るよう記載があろうかと思いますので、漏れなく記載し送信しましょう。
印刷し郵送
印刷して出版社に原稿を郵送するという方法もあります。昨今、郵送を指示する出版社は減りましたがWebサイト等で用紙サイズ、ホチキスの止め位置、送り先などを掲載している場合には、その指示に従いましょう。
郵送を受け付けいない出版社や、何の記載もない出版社に、原稿を送りつけるのはNGです。
ここでは「原稿」という単語を用いましたが、多くの場合で企画書での受付もしています。出版企画を持ち込みたい場合は、企画書を作成し送ります。企画書とは、これから出版したい書籍について概要やターゲット層、売れる見込みなどを説明するものです。
フォーマットが決まっていない場合は、ご自身で企画書に含める項目を決める必要があります。一般的な企画書には以下の項目が含まれています。
- タイトルまたは企画名
- 企画の概要
- 目次案
- 想定する読者像、その人数
- 類書の例、類書との違い
- 著者プロフィール
タイトルや企画の概要、著者のプロフィール、想定する読者像など編集者が売れそうかを判断する上で必要な情報を最低限記載する必要があります。長々と記載するのではなく、ポイントを押さえて簡潔に内容をまとめて記載することが大切です。
企画書を作成する際には、白黒で印刷する(コピーする)前提で、過度な装飾を避け、作成しましょう。企画書に誤字脱字があると編集者は企画そのものにも不安を感じます。提出前に十分推敲しましょう。
必須ではないですが、売上を伸ばすことに貢献できそうな情報は記載すると良いでしょう。
アクティブなSNSフォロワーが多いことや、定期的に講演会を行っているなどの情報は重要です。
専門書の企画の場合は、ご自身の専門性を客観的に説明できると良いでしょう。企画内容が学術的なものか、実用書に属するものかで書くべき内容は変わります。
学歴や経歴、現在の肩書、研究成果などを企画書の中で説明しておきます。
企画や原稿の持ち込み先としては、同ジャンルの出版実績が豊富にある出版社をおすすめします。また、企画の持ち込みを受け付けているかも事前に調べておきましょう。