ビジネス書を出版するならば、タイトルの付け方に工夫が必要です。多くの方はタイトルを読んで、その本を手に取るかどうか決めます。どれだけ内容が優れていても、タイトルが悪ければ見向きもされません。本記事ではビジネス書の魅力的なタイトルの付け方について紹介します。
目次
ビジネス書はタイトルが重要
ビジネス書において、タイトルはとても重要です。本が売れるかどうかを決める重要な要素がタイトルとされています。本の中でまず目にするのがタイトルだからです。多くの方はタイトルからその本が面白そうかどうかを判断します。
同じ内容のビジネス書でもタイトルの付け方によって大きく売上が変わるでしょう。(実際にタイトルの影響度合いをテストや調査し、大差をつけたデータも多くあります。)タイトルを見てから、その本を読むかどうか決める人がほとんどだからです。そのため、時間をかけてじっくりとタイトルを考えます。
ただし、ビジネス書のタイトルを考える際には、さまざまな点を意識しなければいけません。単に奇をてらっただけのタイトルでは逆効果になることもあります。タイトルの付け方について、コツをしっかりと理解しておきましょう。
ビジネス書のタイトルの付け方
ビジネス書のタイトルの付け方について詳しく紹介します。
含める単語や短文を作る
まずは、ビジネス書のタイトルの中に含める単語や短文を作ってみましょう。
実際に単語や短文を作る際の考え方の一例を以下にまとめました。
- 書籍のテーマ・ジャンルは何か
- 読者は誰か
- 読者はどういった悩みを抱えているか
- その書籍から得られる情報は何か
- その書籍を読んでどういった結果・成果を得られるか
- 数字で表現する
- 真逆にあるもの
- 英語や流行語に言い換える
- 比喩や身近なものに例える
上記のようにさまざまな観点から単語や短文を考えてみましょう。はじめから綺麗にまとめようとせず、発散させるように多くの案を作ります。100、200のアイデアを作ることができれば、良いタイトルを付けるための材料を得られます。
表現方法の異なるパターンを作る
タイトルの表現方法について異なるパターンを作ってみましょう。たとえば、1つのタイトルを考えたならば、その表現方法を変えてみることで違った印象のタイトルが生まれます。
タイトルの表現方法のパターンを以下にまとめました。
- 肯定文を否定文にする
- 疑問形にする
- 読者視点の言葉を入れる
- 強調する
- 命令する
たとえば、「◯◯を解決する方法」というタイトルであれば、疑問形にすると「◯◯を解決するには?」となります。また、命令形にする場合は「〇〇を解決するには☓☓しなさい!」となるでしょう。読者視点の言葉を入れるならば「◯◯って難しいの?そんなあなたのために☓☓を教えます!」といった表現方法があります。
1つのタイトルを決めれば、表現方法を変えることでいくつものパターンを生み出せるため、タイトルを決める際に実践してみましょう。
違和感、意外性を検討する
違和感や意外性を狙ったタイトルにすることで、タイトルを見た人を惹きつけるという方法があります。普通のタイトルの中でも、思わず目につく印象深いタイトルがあれば、その本を手に取る人は増えるでしょう。
意外性のあるタイトルとして、たとえば「パン屋ではおにぎりを売れ」という本があります。「パン屋でおにぎりを売れ」というフレーズに意外性があり、どんな内容の本なのか気になるでしょう。
一般常識ではNGとされる表現を使うという方法もあります。たとえば、「すごい手抜き – 今よりゆるくはたらいて、今より評価される30の仕事術」です。本来仕事では手を抜いてはいけないとされているのですが、こちらのビジネス書では手を抜くことで評価される仕事術を紹介しています。
音読し、リズム感を確認する
タイトルを決める際には実際に音読をすることをおすすめします。音読することによってリズム感を確認できるからです。実際に声に出してみて気持ちの良いタイトルであれば、魅力的なタイトルといえるでしょう。語感の良さはタイトルとして重要であり、印象に残るかどうかにも影響を与えます。リズム感が良い文章ほど記憶には残りやすくなります。
タイトルを決める際に字面だけにこだわると失敗しやすいため注意しましょう。実際に読んでみて途中でつっかえてしまいやすい場合は駄目なタイトルといえます。すらすらとよどみなく読めるようなタイトルの方が好印象を与えられるでしょう。
サブタイトルの扱い
本のタイトルというのは装丁に記載されるものすべてではありません。出版社が書名として登録するものがタイトルであり、中にはサブタイトルが付けられているビジネス書もあります。
具体的にはJPROに登録する際のタイトルには、表紙に組み込まれていない文字が含まれるケースがあります。JPROとは出版情報登録センターのことであり、紙と電子の書籍の情報を一元管理するための仕組みです。JPROに登録する際には、タイトルだけではなくサブタイトルを登録することもできます。
タイトルを考える際には、サブタイトルを付けるかどうかも検討しておきましょう。タイトルはキャッチーなフレーズにして、サブタイトルは書籍の内容を簡潔に示すというパターンはよくあります。
売れたビジネス書のタイトル例
過去に売れたビジネス書のタイトルを参考にすることをおすすめします。以下には直近10年で売れたビジネス書のタイトルを列挙しました。
出版年度 | 売れたビジネス書のタイトル |
2014年 | ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく |
2015年 | 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え |
2016年 | 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え 幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え(2) |
2017年 | はじめての人のための3000円投資生活 |
2018年 | 頭に来てもアホとは戦うな!人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法 |
2019年 | メモの魔力 The Magic of Memos |
2020年 | FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 |
2021年 | 人は話し方が9割 ― 1分で人を動かし、100%好かれる話し方のコツ |
2022年 | 限りある時間の使い方 |
2023年 | 佐久間宣行のずるい仕事術 |
たとえば、2015年から2016年にかけてアドラー心理学を題材にした「嫌われる勇気」という本がベストセラーになりました。嫌われたくないという常識に反する「嫌われる勇気」というタイトルは内容が気になるタイトルの好例といえるでしょう。
2021年のベストセラーである「人は話し方が9割 ― 1分で人を動かし、100%好かれる話し方のコツ」は、数字が効果的に用いられており、読んでみたいと思わせるタイトルになっています。
タイトルの付け方の本質
タイトルを付ける際に注意しなければいけないのは、ただ売れれば良いのか?という点です。実際には、読者の満足度や著者のブランディングの観点も意識してタイトルを付けることが重要になります。
(出版社としては読者を裏切りさえしなければ、売れたら正義だとも言えますが、著者の多くは今後のビジネスパーソン人生に書名はついて回るものです。)
ビジネス書のタイトルを考える際には買ってもらえることだけではなく、著者としてのブランディングを毀損しないことも重視しましょう。売れることと著者が受け入れられる書名の両者取りが望ましいですが、難しくともバランスを考えたタイトルを付けることが大切です。
たとえば、目立つために挑発的なタイトルを付けてしまうと著者としての良識を疑われるケースがあります。著者としての信頼を損なわないことも意識しつつ、売れ筋になれるタイトルを考えましょう。
まとめ
ビジネス書はタイトルが売上に大きく影響します。ただし、タイトルは著者のイメージにも影響するため注意しましょう。売上とブランディングのバランスが取れたタイトルを付けましょう。