ビジネス書の印税は何%?具体的な受取額の計算例付き

ビジネス書の印税は何%?

ビジネス書の印税に法的なルールは存在せず、著者や出版社によって異なります。
実際には3~13%程度が相場です。

10%を超える高い印税が設定されるのは一部の著者に限定されます。週に何度もTVで見かけるような人、あるいは国民の半数以上が知っているような著名人であれば、10%を超える印税が設定されるでしょう。ほかにも、過去に発売したビジネス書が10万部を超えた著者なども、10%程度の印税が設定される傾向にあります。

上記のような例外を除くと、標準的な印税は3~7%あたりになることが多いでしょう。

ビジネス書は部数が伸びづらいこともあり、少数ケースになると思いますが、増刷時以降の印税が可変する契約もあります。たとえば、1万部を超えた部分の印税を初期印税のプラス2%にするといった契約です。スタート時4%で、1万部を超えた部分は6%になるといった取り決めです。

印税の計算には種類がある

印税には大きく分けて刷り部数印税と実売部数印税の2種類の計算方法があります。

刷り部数印税

刷り部数印税とは、印刷した部数に対し印税を計算し、著者が受け取る方式です。たとえば、定価1,000円の本を初版5,000部で印刷し、印税が10%の場合には、50万円の印税を受け取れます。刷り部数印税の場合は、実際に書店で売れるかどうかに関係なく印刷した分の印税を著者が受け取れることが特徴です。日本の出版業界においては刷り部数印税がスタンダードでした。(過去形とした点は後述します。)

実売部数印税

実売部数印税とは、実際に書店で売れた数だけ印税が発生する方式です。たとえば、定価1,000円の本が100部売れ、印税10%の場合は印税が1万円になります。仮に2,000部印刷していたとしても、100部しか売れない場合は印税が1万円です。

著者にとっては実売部数印税よりも刷り部数印税の方がメリットが大きいです。一方、刷り部数印税を採用する出版社としては、初版の刷り部数を控えめにするなど、リスクをコントロールする必要があります。

これら以外にも、初版分のみ刷り部数で印税を支払い、増刷分以降は実売部数に応じて支払うといった複合型も存在します。さらに細かいお話をすれば、初版分の一部のみ刷り部数で計算し、以後を実売にするケースもあります。

本を作れば売れる時代(~1990年代)では、事務処理が容易な刷り部数計算が好まれました。
しかし昨今の出版不況もあり、売れなかった作品の穴埋めをヒット作が担う構造にも無理がきて、実売部数で計算するケースも増えています。
特にビジネス書の著者の多くは、作家ではなくビジネスパーソンであり、刷り部数を選択することで初版部数が減ることこそネガティブだと考えることも変化の一因だと言えるでしょう。

印税の受取額の計算方法

印税額を計算する式は「定価×部数×印税率=印税額」です。定価に部数をかけて売上を求めて、売上のうち印税率の割合が印税額になります。

ただし、発生した印税額からは源泉徴収がなされます。そのため、実際に著者が受け取る印税の金額は「印税額―源泉徴収=受取額」です。

源泉徴収とは、1年間の収入に課税される所得税をあらかじめ給与や報酬から差し引くことを指します。印税収入も源泉徴収の対象となり、必ず印税から一定割合の源泉徴収が差し引かれるルールです。

源泉徴収は10.21%か20.42%のいずれかが適用されます。税抜収入が100万円までの部分については10.21%が適用され、税抜収入が100万円を超える部分の源泉徴収の率は20.42%です。

出版社からは源泉徴収を差し引いた金額が著者に支払われます。また、出版社からは支払調書が送られてきて、印税額と源泉徴収された金額を確認できます。著者が確定申告をする際には、支払調書を用いて申告します。

税のお話になるため、詳細は専門家に託しますが、年間所得が少額の方は、確定申告をした結果、所得税が還付される場合があります。印税から源泉徴収された所得税よりも確定申告で計算した所得税が小さくなることがあるからです。確定申告の所得税額より源泉徴収された額の方が多い場合は、差額が還付されます。

ビジネス書1冊あたりの印税

ビジネス書が売れた場合に1冊あたりどのくらいの印税が発生するのかを、具体的な数字を用いて説明します。定価1,500円、印税10%とした場合には、1冊あたりの印税は150円です。また、実際に出版社から受け取れる金額は源泉徴収を差し引いて134円になります。(10.21%の場合)

以下では、同条件で書籍が1万部の場合と5万部の場合の印税を紹介します。

1万部の場合

定価1,500円、印税10%の本が1万部売れた場合は「1,500円×0.10×10,000=1,500,000」で1,500,000円が印税になります。

実際に著者が受け取る金額は「1,000,000×0.8979+500,000×0.7958=1,295,800」から1,295,800円です。

5万部の場合

定価1,500円、印税10%の本が5万部売れた場合の印税は「1,500円×0.10×50,000=7,500,000」から7,500,000円であることがわかります。

実際に著者が受け取る金額は「1,000,000×0.8979+6,500,000×0.7958=6,070,600」と計算できるため、6,070,600円が著者の受取額です。100万円を超える部分から源泉徴収の率が高くなるため、1冊あたりの受取額は5万部の方が低くなります。