出版社は儲かるの? 商業出版時の費用の種類・金額

電子書籍や電子コミックの普及により、手軽な方法で本を読むことができるようになった一方で、「読書離れ」という別の問題もあり「出版業界は斜陽」と言われる時代になって久しくなりました。
今回はズバリ「この時代に出版社は儲かるのか?」ということについて、商業出版時における諸費用の視点からお伝えします。

費用の種類

まず、書籍を出版する場合にかかる費用の一覧をご紹介します。

  • 編集者、校正者の人件費
  • 文字組み(レイアウト作成)、装丁デザイン等の人件費
  • 用紙代、印刷・製本費
  • 取次フィー
  • 書店販売フィー
  • 物流費(倉庫搬入・保管代、運送費)
  • 販売促進費(営業人件費、広告費)
  • 印税

各費用の額、または割合

一冊の書籍が作られる過程には、細かな費用が必要になることをお分かりいただけたと思います。これらの費用を各項目別で考えると以下のようになります。

編集者、校正者の人件費

一般的に、書籍1冊の編集・校正は編集者(校正者)が一人で担当します。そのため、編集者一人当たりの人件費として40〜50万円程度が発生します。

文字組み(レイアウト作成)、装丁デザイン等にかかる人件費

本文のレイアウトや装丁デザインは、専門のデザイナーさんにお願いする場合がほとんどで、1冊につき10〜20万円ほどかかります。まれに印刷所でも対応可能な場合があり、それによりコストダウンを見込めるケースもあります。

用紙代、印刷費、製本費

これは本の判型(大きさ)、ページ数により前後しますが、2,000部印刷した場合で約50〜60万円程度です。

取次フィー(取次業者への手数料)

書籍の出版において忘れてはならないのが「取次」の存在です。取次とはいわゆる「問屋」と同様で、全国に多数ある書店と発行元である出版社を繋ぐ重要な役割を担っており、書籍流通の要になります。取次は独自の流通データをもとに全国の書店へ書籍を配本します。一つの書籍で発生した売上げの約8〜10%が取次手数料となります。

書店販売フィー(書店への手数料)

書店に対し売上げの22〜30%を手数料とし支払います。
商業出版では取次経由による書店配本が通常の流れになりますが、まれに取次を介さず、書店と出版社が直接取引(直取引)を行う場合があります。このような場合は出版社から直接書店へ書籍が送られることになり、売上げの28%~35%の手数料(正確には手数料相当を差し引いた掛け値で卸す)となります。

物流費(倉庫・配送費)

ある程度の部数を印刷した場合、在庫を保管するための倉庫が必要になります。保管部数や倉庫により金額に差はありますが、2,000部を保管する場合、平均して月3,000円ほどが相場です。配送費は一般的な輸送費と同様で、チャーター便や宅急便の利用料となります。

販売促進費(営業人件費、広告費)

出版社から新刊が発行された場合に重要なのが販売促進です。新聞、雑誌、Webメディア等へ広告を掲載したり、営業担当者が実際に書店を回ったりと、販促活動を行います。
営業人件費は計算が難しいですが(数タイトル同時に営業するため)、1人の営業あたり1タイトル10万円程度と考えるのが良いでしょう。新聞・雑誌へ広告を掲載する場合、大きさにもよりますが地方紙1回の掲載につき20〜50万円が相場です。

印税

商業出版の場合は、原稿を執筆した著者に対して印税の支払いが発生します。一昔前は売上げの8%前後が支払われていましたが、現在では低下傾向にあり、著者の経歴やネームバリュー等を加味し、3〜10%のいずれかとする傾向が増えているようです。

合計

ページ数や判型、部数、印税等により、商業出版における諸費用は各項目で幅があるものの、平均して1タイトルあたり約200〜300万円となります。

書籍あたりの売上額にもよるため、費用面を考慮すると出版社は決して儲かるとは言えません。しかしながら、世の中の動向を見極め、時代に沿ったコンテンツを開拓できれば大きな売上げも夢ではないかもしれません。