出版社から書店までの流通

出版物が消費者(読者)の手元に届くまで下記の流れがあります。
メーカー(出版社)→問屋(取次)→小売り(書店・コンビニ)→消費者
出版社・取次・書店の業界三社を通じて消費者の手元に届く構造は他業界と同じです。しかし、特殊な形態をもっているのが出版業界です。

特殊な点は、基本的に出版物は委託販売制をとっている点です。書店は出版物が売れ残った場合、出版物を出版社に返品することが可能です。
出版物が流通するうえで、出版社と書店との間ではさまざまなやり取りがおこなわれます。物流面では出版物の送品、返品作業、情報面では、出版物の売り上げや商品に関する各種データの相互把握、金融面では商品代金の支払い及び請求などです。

現在、1年間あたりの出版物総数は7万から8万点と言われています。1日あたり200点以上も新たな出版物が発行されています。各分野において膨大な労力とコストがかかってきます。
それを緩和するために、取次が間に入ることによって、出版社と書店間での物流、情報、金銭のやり取りを一手に担い、処々に供給しているのです。

出版社は出版物を取次に送品し、取次を通して、全国各地の書店へ出版物を流通させています。また各取次は自社に搬入される出版物の総数と、書店側からの出版物の注文数や出版物の過去の売上実績などのデータを精査し、各書店への送品数を決定していきます。この一連の作業を配本と言います。
出版社は新たな出版物が刊行されるときには、取次へ仕入れの交渉を行います。これを取次営業もしくは部数交渉、または部決といいます。

取次の仕事

出版社が取次にたいして行う部数の交渉を取次営業と言いますが、これに関して詳しくみていきましょう。
出版社側としては可能な限り利益を生み出したいという考えがあります。
そのためできる限り多い部数(場合により絞った大型店にのみ配本する部数)、最低限これぐらいは仕入れてもらわないと困るという部数(場合により初版を注文配本と委託配本のバランスを取りたいと考えた部数)のラインを設けています。
出版社側が考える希望の部数を取次に仕入れてもらうために、出版社の営業は取次の仕入れ窓口にたいして、商品のPRを行います。

一方で取次は仕入れ数の判断基準としては、過去に刊行された類似出版物の販売実績や送品数に対する返品数の割合(返品率) データを参考にしながら仕入れ数を提示します。ビジネス街にある書店に対しては、ビジネス実用書や自己啓発本、スキルに関する本を多く配本しますし、小中学校の近くにある書店に対しては、マンガ雑誌やコミック本、参考書、辞書、図鑑などを多く配本しますし、商店街にある本屋さんは主婦層をターゲットにした料理本、片づけ術や趣味に関する本、育児書などを配本するなど、商品の特性と、書店の規模・立地・客層などを吟味してから、配本数が決められています。
データはあくまで数字の世界なので、出版社の営業は、データを上回る新たな刊行物に対する付帯要素をPRする必要があります。そのアピール如何によって、取次が仕入れる部数が左右されます。
付帯要素とは、商品の特性、著者の情報(人気作家・話題の作家など)や商品を売るための販促及び広告計画、読者ターゲットについてなどです。

アピールの出来不出来によって、多く仕入れてもらうこともあれば、予想を下回る仕入れ数に終わってしまうこともあるので、部決の場面では、出版社の営業の腕の見せ所、営業力が問われる大事な役割を担っていると言えます。

出版社と取次の間での部決を通して出版物の初回流通部数が決まると、次は取次では配本作業が行われます。

出版物の物流にかかわるビジネス

取次

取次とは、出版とその関連業界で、出版社と書店の間をつなぐ流通業者を指す言葉です。出版取次と呼ぶこともあります。
取次と書店との関係は、卸売問屋と小売店の関係にあたります。他の業種との大きな違いは、書店が在庫管理を行わずにすむのが委託販売制度というもので、取次がその業務を引き受けています。
出版業界では、出版社、取次、書店を通して、出版物が消費者の手に渡る物流形態をとっています。
例えば、
本の流通に関しては、基本的にデータ上で行われ、書店の売り上げや返品に関する実績データをもとに配本に反映される仕組みになっています。
委託販売制度では、出版物は出版社から取次を通じ、書店に流通していきます。

取次の営業担当者の書店営業

取次の営業担当者は書店に対し、新刊や売れ筋商品について、仕入れをすべき商品についての提案を行います。また取次独自のセット商品などの企画を提案し、仕入れを促します。

取次は出版社と書店の間に位置するため、様々な情報が集約されます。 これらを営業担当者が集約・分析・加工することで、各書店の立地、ターゲット客層、売れ筋、社会の流行など条件にあった配本や売場の提案を行います。

また、多くの出版社と取引があるため、複数の出版社の商品をセットにすることができます。主婦層向けの趣味や生活関連本や旅行者向けガイドブック、ダイエットやモテ本などあるテーマに基づいて、売れ筋商品をピックアップし、書店の担当者に提案します。

出版物を通して、お互いに各々が利益を生み出すことはもちろんですが、出版業界3社それぞれが利益を出すことができるよう、それぞれの立場で意見を出し合いながら本が売れる売場を作っていきます。

出版社営業担当者の書店営業

出版社の営業担当者は書店に対して、出版物の在庫状況のチェック、欠本の補充、新刊の情報提供や受注、売れ筋・話題・注目商品の情報提供、 季節商品・セット商品の提案、受注、店頭での販促につなげるためのポップなど販促物を提供し自社商品をアピールしたり、他の書店の状況や、他の出版社商品情報などをお互いに情報交換をしたりします。

書店側が独自に入手できる情報や、出版社の営業担当者が客観的にみて気づいたことなどの情報をお互い共有しあったり、手が回らない部分を営業担当者がサポートしたりすることで、良い関係を築きあげていくという事が、書店営業に於いて最も重要なポイントです。

書店

取次において、配本処理された出版物は書店へと納品されます。 書店では納品された出版物の検品・仕分けを行います。

荷受けから仕分けまでの流れ

荷受け

運送会社が運び込んだ出版物の個数を明細と照らし合せする

荷開け

入荷した出版物の梱包を解く

検品

入荷商品のタイトル・価格・冊数を取次から送られた伝票と照らし合わせ、確認する。

仕分け

新刊、注文品、補充品、注文品などに仕分けしたあと、ジャンル別に分類する

荷受け時に間違いがある場合には運送会社に、検品時に間違いがある場合は取次に連絡し、 それぞれ対応してもらいます。
それぞれ検品・分類が終わったら、店頭に出版物を並べます。

本を売り出す場所としては、それぞれ独立した「フェア台」や「棚エンドの平台」、「棚前の平台」、「棚差し」などが挙げられます。
新刊や売れ筋商品だとフェア台やエンド平台、通常の商品は棚前平台、動きがそれほど激しくない商品は棚差しで展開されるのが一般的な展開の方法です。
大きな書店などはジャンルごとの担当者がおり、入荷してくる商品とすでに入荷して本棚に並んでいる商品を照らし合わせながら、日々棚作りを行います。

書店店員の業務内容

  • 棚の動きを日々注視しながら、動きの鈍った商品を平台から棚差しに移動したり、しばらく動きがない商品は取次に返品手続きをおこない、新しく入荷した商品を消費者の目に留まりやすいように展開するスペースを作ります。
  • 売れ行きが良い商品はフェア台や平台など目立つ場所に陳列・展開します。
  • 在庫が切れた欠本や品薄状態の本を出版社や取次に発注します。
  • ポスターやPOPや書店定員による感想やランニング表など、販促物を使って消費者の注目を集め、販促を促します。

効果的な商品の陳列を行う事で、書店は販売機会の増大を狙います。陳列方法を工夫することで販売効果を高めるのが書店員の腕の見せ所となります。

店内の新陳代謝を促すため、書店員は日々の業務として商品を流通させる工夫を繰り返しているのです。当然、商品を購入する際のレジ打ちやお客様対応などの業務も発生します。
消費者側から見える業務以外にもたくさんの仕事があります。

出版社での事務系業務

出版物が出版社から取次に渡ってしまえば、それで出版社の仕事が終わるという訳ではありません。出版物が世に送り出されたあとの、出版社内での仕事についてみてみましょう。

  1. 1出版物の内容に関すること、どこの書店で取り扱っているかなど、読者からの問い合わせ応対
  2. 商品の注文に関すること、在庫状況などに関することなど、 書店・取次からの問い合わせ応対
  3.  各種伝票の処理業務
  4.  出版物の売上に関するデータ収集及び、入力、資料等の作成
  5.  書店で出版物販促につなげるためのポップの作成や注文書の作成など。

本が出版されてから、店頭に並び、消費者のもとに届けられるまでさまざまな仕事があります。一言で出版関係と言っても、仕事の種類は多岐にわたります。