出版の流通の仕組み(3種類)

書いた本はどのように読者の手に渡るのでしょうか。本の流通はどうなっているのでしょうか?
作家さんが書く、編集者さんが編集する、そこからどうやって私たちの手元に届くのでしょうか?今日は流通について勉強していきましょう。

3種類ある流通形態
まず私たちが主に本を手にするのはどこでしょうか。

  1. 書店店頭
  2. 電子書籍
  3. インターネット通販サイトでの購入

他にもあるかもしれませんが、とりあえず大まかにこの3つを比べてみたいと思います。

流通1:書店

1の場合は書店が出版取次と呼ばれるいわゆる問屋から本を仕入れします。作家さんが書いた物を出版社が発行、出版取次におろし、そこから書店に送品されて店頭に並び消費者の手に取られるわけです。
さて、では出版取次(問屋)とはなんでしょうか?
ここは上記の流れから分かるように出版取次は出版社と書店を結ぶ会社。出版社から直接書店へ卸すと商品の発送、返品の管理から売り上げの管理、商品のデータなどすべての情報を出版社自体が担当しなければならなくなります。
細かく言うと出版取次の仕事としては、
商品の発送、返品、返送、商品代金の管理(請求と支払い)、売上げの管理など
があります。
確かにこれだけのことを出版社や書店が兼任するとなればそこに割かれる労力はかなりのものになります。専用の部署を作ったとしても、会社にとっては負担のある仕事量であることは素人でも分かります。
それはものすごく大変ですから、それを専門にやりましょうというのが出版取次会社の存在です。
書店によって、また書籍の種類によっては出版取次を通さずに出版社から直接仕入れをするものもありますが、書店に並んでいる書籍の多くは出版取次によって管理され発送された商品ということになります。

さて、ここで一つ疑問ですが書店で売れ残って返品となった場合、書店や出版取次はどのくらい損をするのでしょうか?
これは、答えは0です。書店は委託販売という形を取っていますので基本的には出版取次から預かった販売書籍を店頭で売っているということになります。出版取次は出版社から管理を任されてしかるべき販売ルートを確保、出荷しているわけです。ですので両者(書店・取次)損をするということはありません。返品などの損失は出版社に行くことになります。しかし、あまりにも毎回返品の多い書店へは新刊の卸数が少なくなったり卸してもらえないなんていうことも起きてしまうようです。確かに売れない書店に卸すよりは売れる書店に卸したい出版取次さんの気持ちも分かります。
歴史的にみてみると、もともとは出版社や書店自体が取次業務も兼任していたようですが、雑誌の販売数増加に伴って出版取次のみを行う会社が増えていったようです。出版不況なんて言葉も生まれ雑誌が売れないと嘆かれている昨今ですので出版取次も苦しいでしょう。

流通2:電子書籍

2の電子書籍ですが、これは電子書籍取次という会社が販売サイトに供給しているものになります。Kindleなど個人での登録・販売も容易なサービスが多くありますが、刊行点数が数点であれば取次を介さずに済むでしょう。しかし数百点を超える刊行がある場合には、電子書籍の取次を介す場合があります。
電子書籍が登場してまだ歴史が浅いので、電子書籍の購入サイトを見たことがある方はわかるかもしれませんが、以前紙媒体でのみ販売されていた書籍が電子書籍化して販売されていたりすることが多くあります。こういった場合、アナログ書籍を電子書籍に変換する必要があります。それを行っているのが電子書籍取次になります。
最近の作品は最初から電子書籍販売を見越して専用のデータを出版社にて作成し、そのデータを電子書籍取次が預かって販売サイト向けに仕様変更していることもあります。中には電子書籍取次店自体が電子書籍の販売サイトを運営している場合もあります。
電子書籍と一言で言っても様々なサイトが存在し、ポイント制であったりクレジット決算であったり、携帯電話の通話料金と合算しての支払いであったり、またアプリをダウンロードして読むものやサイトに接続して読むものなど利用者が自分の利用しやすいサイトを自由に選べるようになっています。
漫画に特化しているサイトや青空文庫の書籍を集めたサイトなどユーザーの年齢や趣味によっても供給内容が異なっている場合が多く、電子書店をも選ぶ時代になっています。
特にスマートフォンの普及によりワンクリックですぐ本が読める時代になりとても便利さを感じていますが、こうして書籍の「流通」としてみてみると電子書籍の流通も手間のかかる作業です。

流通3:インターネット通販

3のインターネット販売ですが、これは直販と言われる出版社から直接購入する方法と、出版社が通販サイトへ直接卸す方法と、1で出てきた出版取次が関わっている場合と3種類あります。
直接販売の場合は分かりやすく言うと出版社のホームページなどから直接購入申し込みをし、送られてくる場合です。週刊誌などを出版社のホームページから定期購読申し込みをした場合、これは直接販売ということになります。購入したことがある方はご存知かもしれませんが、出版社の封筒で送られてきます。

自費出版の場合、直販が多いようです。自費出版の場合は著者が流通費用を負担できないことが多いことから、コストを下げる目的で直販のみとすることが多いようです。
最近は書籍の宣伝をどこで目にしますか?TVでの宣伝は少なくなっているように思いますし、雑誌や新聞の隅に書かれている宣伝文句はすでに雑誌や新聞の読者でないと知りえない情報です。一番目にするのはインターネットでのサイトではないでしょうか。それは作者や出版社の発信しているSNSかもしれませんし、アクセスしたインターネットサイトの広告欄かもしれません。それらから得た情報で書籍を購入したいと思った場合、アクセス先は書店ではなく出版者や執筆者のホームページになるはずです。
という流れで、インターネットでの直接販売が成立しやすい状況にあります。

Amazonや楽天などといった大手通販サイトでの書籍販売はどうでしょうか。こちらは出版取次が関わっていることが多くあります。購入書籍はどこから送られてきますか?発送元がamazonや楽天だった場合、それはその「販売サイト」へ出版取次が卸しているということになります。(楽天ブックスであれば、大阪屋栗田が卸しています。)
ただし、Amazonは取次を介さない出版社との直取引を増やしています。e託サービス(出版社向けの管理システム)を用いて、書籍の納入や販売数報告等が行われています。

最後に

以上、本の流通について3つのルートを比べてみましたが、取次を介しているか直接販売をしているか、出版社と通販サイトが直取引をしているかのいずれかになります。出版業界の不況が嘆かれている昨今ですので、今後また新たな流通が生まれるかもしれません。