出版までの流れ(企画から流通まで)

本が出版されるまでには企画から流通までに多くの作業工程があります。
編集部による企画、ライターによる執筆、編集部による校正作業、入稿を経て、印刷会社による印刷・製本、そして取次を経由しての配本(流通)という流れになります。
基本的には1冊の本の企画から製本に至るまで1人の担当者がつきますが、各工程においては分業になっています。出版社によっては、企画から製本までを自社で行う場合や、企画のみ自社で立案して、執筆の後、外部の編集プロダクションに外注する場合などがあります。規模の小さい出版会社では分業化は少なく、一人の担当者がほとんどの工程行うことになります。

では出版までの流れを各工程ごとに詳しく見ていきましょう。

企画

出版の流れにおいて、まず最初に行う作業が企画の立案です。
雑誌の編集者などは書店の店頭での販売状況を調べたり、インターネット上で社会のトレンドや世の中の動向などを観察しながら、どのような本が売れるのか予測し施策を練ります。特に雑誌の編集部では、各編集者により考えられた企画の中から、より優れたものを選ぶための企画会議が頻繁に行われています。出版社によっては、年度頭に1度開くところもあれば、半年に1回、月に1、2回、毎週開くところなど様々です。
年に1度だけしか企画会議を開かないところは、企画が通らなかった場合1年間待たされることにもなります。

最近自費出版を希望する人も増えてきています。その場合は、著者自身による企画がスタート地点になります。ターゲットとなる読者層や、一番伝えたいことは何かなど執筆者の考えをベースに、どのような内容の本にするか、文字数、文体や、装幀イメージなどを決めていきます。
企画に沿った仕上がりとなるよう、編集、デザイン、校正各工程のプロがきちんと仕事をこなしていきます。イラストや写真などが必要な場合には準備します。

執筆

企画が固まったら、執筆してくれるライターを選出します。選出方法としては、企画内容のジャンルに精通している専門家や関連本の執筆経験を持つライターや、新人ライター発掘など様々です。雑誌の取材などでは、ライター選出だけでなく取材先を選んでアポを取ったり、カメラマンを選定することも仕事の一つです。
執筆するライターが決まったら、構成内容について念入りに打合せを行い、執筆が開始されます。締め切り時期に関しては、書籍の場合、執筆者自身のペースに任せられることが多く、雑誌については発行サイクルが決まっているので、締め切りに間に合うように執筆者のスケジュール管理をするのも編集者の仕事になります。

校正

執筆者が書き終えた原稿は、文字の間違いがないか、間違った表現がないか、事実関係に問題がないか、体裁が整っているのか細部に至るまでチェックします。
校正の工程は編集の一連の工程の中で、かなり重要な部分であり、その分ウエイトも高い工程となります。
校正の一番の目的は訂正すべき箇所がないかを探し出すことです。
どのような点に注意するかと言えば誤字や脱字はもちろんのこと、言葉の誤用や漢字が正確に使用されているか、正しい表現がなされているかなど、チェック内容は多岐にわたります。 
間違いは文字だけに限らず、執筆者の勘違いや、ストーリーの矛盾が見つかることがあります。
変な言い回しや意味が分からない文章があれば、編集者から執筆者に対して別の表現方法や新たなストーリーの展開を提案されることもあります。執筆者の頭の中で分かっていても、読み手には伝わらない、理解できない内容があらぬ誤解を生むことがあります。
執筆者がついつい見逃しがちな「てにをは」や、ら抜き言葉など、編集者の厳しいチェックが入ります。 
校正の流れでは、内容に訂正がなくなるまで何度も修正を繰り返します。初校から何度かの修正を経て、全ての編集作業が終了(校了)となり、印刷会社へ入稿という流れになります。

入稿

完成した作品データを製本する工程である印刷会社に引き渡す作業のことを言います。最近では編集者がデスクトップパブリッシング(TDPの略。印刷できる直前の状態までデータを作成する作業のこと)をDTPオペレーターに引き渡すことを入稿と呼ぶ場合もあります。
この工程は、編集者が担当したり、社内DTP担当者が担当するのか外注するのかは出版社によりさまざまです。

この一連の作業が終了すれば、紙に印刷(下版またはゲラと呼ぶ)されます。

印刷

用紙サイズや紙質の選定作業を行います。
印刷が仕上がると、製本されて本の完成となります。

印刷の種類

印刷の種類は様々あります。

オフセット印刷

4色(CMYK)ごとに製版します。
一度にたくさん印刷することができるうえ、非常に鮮明な印刷が可能です。
商業印刷物や美術印刷の多くに、この印刷方式が用いられています。

オンデマンド印刷

デジタルデータを直接出力するデジタル印刷機を使用して印刷する方法のことをオンデマンド印刷といいます。

グラビア印刷

写真グラビア、新聞の日曜版、雑誌、DM、菓子や食品を包装するフイルム資材や袋の印刷などに適しています。

フレキソ印刷

表面が平坦でないもの、滑らかでないものへの印刷に適しています。
版材には柔軟性の高い、樹脂・ゴム製の材料が使われます。
飲料品の紙パック、段ボールなどの紙器、封筒のほか、シール・ラベル、建築材などへの印刷にも使われます。地球環境に配慮した水性インキやUVインキが使えるので、環境に優しい印刷方法です。

活版印刷

活版印刷の歴史は古く15世紀のヨーロッパで開発されました。少し前までは新聞・雑誌・書籍などの印刷に用いられた印刷方法です。葉書や写真、絵画などの美術書印刷に多く用いられます。

スクリーン印刷

日常における生活用品や工業製品、さらに美術の分野などで幅広く用いられているのがスクリーン印刷です。紙はもちろんのこと布や皮製品、ゴムや金属・樹脂製の材料などにも印刷が可能です。

発売

完成された本は取次店に搬入され各書店へと配本されていきます。
書店員は売れ行きが良い商品はフェア台に配置したり、平台に平積みするなど、目立つ場所に陳列し、積極的に売り込みます。
また、在庫が切れた本や品薄になった本があれば、逐一出版社や取次に発注をかけます。ポスターやPOPや書店店員による感想やランニング表など、販促物を使って消費者の注目を集め、販促を促します。
書店員は棚の動きを日々注視しながら、動きの鈍った商品を平台から棚差しに移動したり、しばらく動きがない商品は取次に返品手続きをおこない、新しく入荷した商品を消費者の目に留まりやすいように展開するスペースを作ります。
いかにして商品の流通を高めるかを、ふだんから消費者の動向を深く洞察しながら、どう陳列をすれば販売拡大に繋がるのかを考えているのです。陳列方法を工夫することで高い販売率に繋げられるのかが書店員の腕の見せ所となります。

店内の本の流れを良くするため、書店員は日々の業務の中で商品を流通させる工夫を繰り返しています。当然、商品を購入する際のレジ打ちやお客様対応などの業務も発生します。
書店員は、消費者側から見える業務だけではなく、たくさんの本を消費者のもとに届けるべく日々奔走しているのです。

最後に

以上が本が出版されるまでの一連の流れになります。ご参考になったでしょうか?
書籍の出版を考えている方は、出版への応募に挑戦してみましょう。
出版会社の仕事をしたいと思われている方は、関わりたい業務内容や希望するジャンル等について、志望する企業のホームページや企業求人案内などで事前にチェックされることをお勧めします。