
書籍概要
本書は、「日本の医療制度は誰のために存在しているのか」という根源的な問いから出発し、現行制度の構造的問題を明らかにするとともに、未来の医療のあり方を提示する社会提言書である。
現在、日本の医療費は年間45兆円規模に達し、国家財政や国民生活に深刻な影響を与えている。しかしその増大は単なる高齢化では説明できず、診療行為の量に応じて報酬が支払われる「出来高払い制」による過剰診療・過剰投薬・過剰検査といった構造的問題に起因している。本書は、この制度が医療を「健康のための営み」ではなく「消費拡大の仕組み」へと変質させている現実を、臨床経験とデータをもとに鋭く描き出す。
さらに、膨大な医療費の相当部分が製薬会社や医療機器メーカー、特に海外資本へ流出している実態や、厚労行政の不透明な意思決定構造、医師の過重労働と職業的自律性の喪失など、日本の医療を取り巻く多層的な問題を体系的に分析する。
そのうえで本書は、医療の評価軸を「行為の量」から「健康の成果」へ転換する**VBHC(Value-Based Health Care)**の導入を中核的解決策として提示し、患者の生活の質や健康改善度を基準に医療を再設計することで、医療費の効率化と国民の健康寿命の延伸を両立できる可能性を示す。また、制度改革にとどまらず、予防医療への投資拡大や国民の健康リテラシー向上、さらには個人レベルでの「ミトコンドリア・フィットネス」による生活習慣改善まで踏み込み、「国家制度」と「個人の生き方」を接続する包括的な健康戦略を提案する。
本書は、医療制度を専門家や行政の専有物から取り戻し、「国民自身が選び直すべき公共システム」として再定義する試みである。医療費問題に関心を持つ一般読者から政策立案者、医療従事者に至るまで、広範な読者に対し、現状を問い直し未来を構想するための思考の枠組みを提供する一冊である。
著者紹介
山田 博規(やまだ ひろき)
医師。神戸大学卒業。臨床医として長年診療に従事し、産業医として企業における労働衛生・予防医療にも携わる。
医療現場での経験から、出来高払い制度が検査・投薬偏重を生み、医療費の増大と国民の健康成果が乖離している現実に疑問を抱く。Value-Based Health Care(VBHC:価値に基づく医療)への転換を提唱し、「健康という成果」に報酬を支払う制度設計を主張している。
