「分水嶺 濁流の果て」を発売


書籍タイトル:分水嶺 濁流の果て
著者名:若狭 勝
ジャンル:日本文学小説・物語
発売日:2019/3/16
販売ページ:Amazon

著者コメント

あらすじ

人は、 時に、想定できない形で、「人生の分水嶺」を迎える。

一人娘を遠隔地に嫁がせることに父が反対したため、週末に佳子(妻)が東京浅草の実家から福島県浪江町の純一(夫)宅に通う形で新婚生活が始まった。
幸せの絶頂で妻が懐妊したが、丁度その時、「幸福と不幸、平穏と不穏、安堵と恐怖」の分水嶺となる東日本大震災が発生。大津波と原発大事故が浪江町を襲った。
被災避難者となった純一は、福島県浪江町から妻の実家近くのマンションに移り住み、期せずして、寝食を共にする二人の生活が実質的に始まった。
支え合い、二人で仲睦まじく暮らすと思われたが、実際は、津波で母・家・仕事のすべてをなくし、将来への不安などで精神的に押し潰されそうな純一から、以前の陽気な性格は完全に消え失せた。些細なことでも夫婦の口論が絶えなくなった。
こうした日常的現実から逃避するように、純一は、元職場関係者で妻の性格とは真逆の自由奔放な佳奈子の魅力に惹かれ、その結果、不倫に陥るのにさほどの時間を要しなかった。
不倫の発覚を防ぐため細心の注意を払っていたが、ある出来事から妻に不倫を悟られたと思い込む。そのため、もともと結婚に反対されて嫌悪感を強く抱き続けてきた義父に不倫を告げられると感じて激高し、自宅台所で、妊娠中の妻を刺し殺した。
殺人犯のレッテルを貼られた上、長期の服役生活等を余儀なくされることに耐え切れないと思った純一は、逮捕直後から、「妻が先に刃物を持ち出し自分に突進してきた」旨、真っ赤な嘘の供述に終始した。
不倫相手の佳奈子も純一との情事を全面否定。
これらの嘘が分水嶺となり、裁判員裁判では、殺意が認められないばかりか、純一の供述に沿って犯行に至る経緯が認定されてしまった。
妻の父は、最愛の娘と生まれ来る孫を突然奪われ悲嘆の日々を送らざるを得なかった。
加えて、虚言で塗り固められた判決を受け入れ難く、墓で眠る娘に純一を絶対に許さないと誓う。果たせるかな、父は、純一と佳奈子の供述が完全な嘘であるとの「最期の証明」を試みる。
「虚言によって発生した濁流」が、「人生の分水嶺」を形成し、思わぬ展開になる中、最後にその濁流から這い上がろうとする佳奈子の言葉によって社会の在り方が問われることで「完」を迎える。

著者紹介

現 弁護士
1956年、東京都葛飾区に生まれる。司法試験合格後、検事となり、26年間、殺人事件等の被疑者の取り調べ及び捜査指揮に当たった。
その後、弁護士となるとともにテレビコメンテーターとしてマスメディアに出演。その後、約3年間、衆議院議員を務めた。

著書
「嘘の見抜き方」新潮新書
「ニュースで鍛える善悪の整理術」産経新聞出版 ほか